2011年4月23日、原子力安全・保安院は次の通り、これまで個々に行われていた記者会見を一元化して実施する旨の発表を行なった。
福島原子力発電所事故対策統合本部より、次のとおり定例記者会見の実施について連絡がありましたので、お知らせいたします。
4月25日(月)から、細野事務局長をはじめ、原子力安全・保安院、原子力安全委員会、文部科学省、東京電力などが共同で、午後に一回(午後5時を目途に)、定例の記者会見を同本部の置かれている東京電力本店の3階会議室で開催することとします。
[問い合わせ先]
- 原子力安全・保安院 ERC広報班
- kyodokishakaiken-toroku@meti.go.jp
【BELTIXコメント】
この発表に添付されている「福島原子力発電所事故対策統合本部の共同記者会見の実施について」という発表資料は、beltixの知る限り、「福島原子力発電所事故対策統合本部」の名の下で公表された唯一の書類だ。3月15日に菅総理が(名目上の本部長となって)発足させた統合本部であるが、これまで事故関連の対応・進捗状況に関しては、常に東電と保安院、安全委員会の背後に隠れており、一切外部への公的な発表を行なってこなかった。
今回、統合本部が主導するかたちで統一会見が行なわれることは、遅きに失するとはいえ、これまで情報が錯綜して国民に不必要な不安を与えてきたことから考えれば、一定の評価をすることができる。しかしながら一方で、国民や報道側から数々の批判を浴びてきた東電や保安院の情報開示に関する姿勢が、より不明瞭で信頼に欠けるものとなるのではないかという危惧がある。いわゆる「大本営発表」的な情報統制につながる恐れだ。
同じく4月23日の時事ドットコムの記事によれば:福島第1原発事故で、政府と東京電力の事故対策統合本部は23日、東電本社と経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会が別々に行っている記者会見を25日から一本化すると正式に発表した。毎日午後5時をめどに東電本社で行う。説明の食い違い解消が目的という。会見には同本部事務局長の細野豪志首相補佐官も出席。記者は事前登録制となる。東電によると会見にはフリージャーナリストも参加可能だが、参加の可否は保安院が審査するといい、批判の声が出そうだ。保安院の西山英彦審議官は参加記者に条件を付ける理由について、「メディアにふさわしい方に聞いていただきたいと考えている」と説明した。(時事ドットコム記事リンク)
この西山審議官発言が事実だとすれば、国民の知る権利を阻害する不穏当な考え方と言わざるをえない。さらに言えば、今回の統一会見に関わる公式な発表を保安院が行なうというところに、より大きな問題がある。少なくとも、これは「福島原子力発電所事故対策統合本部」が自ら行なうべきものであり、本部長の菅総理、または事務局長(となっていると伝えられているが、これも正式発表されたという形跡はない)である細野豪志首相補佐官名義でなければならないはずだ。
そもそも、 「福島原子力発電所事故対策統合本部」なるものが、菅総理のツルの一声で設立されたもので、この統合本部が実質的な指揮・命令権をもつ組織であるのかどうかが明らかではない。仮に指揮・命令権があるとすればその法的な根拠は何か。また、統合本部の指揮・命令によって行われる対策や作業から発生する費用は、どのような財源によって担保されるのかも不明である。このようにその存在自体が不明確であり、かつリーダーシップに欠ける統合本部が、今後、どのような位置づけで事故対策の全容を担うのか明確にしていただきたい。
週明けの4月25日に初の統一会見の成り行きが注目されるところであるが、仮に、先の西山審議官発言、および「福島原子力発電所事故対策統合本部の共同記者会見の実施について」に示されている会見に参加するための事前予約や資格などの要求により、メディアが選別されるとすれば由々しき事態である。3月11日の事故発生以来、既存マスメディアが充分に伝えることのできなかった東電、保安院の会見の模様を40日以上にわたり、youstreamやニコニコ生放送を通じて連日数時間も実況で伝えてきたインターネットメディアが排除されるようなことが絶対にあってはならない。
特に海外において日本とのビジネスを結ぶ仕事を行なっている我々のような立場では、インターネットメディアやソーシャルネットワークの存在が情報の生命線となる。日本政府の危機管理能力不足や東電の情報開示に関する不信感が、様々なメディアによって強い論調をもって伝えられている米国では、ビジネスへの影響も甚大である。海外の同盟国への外交的な配慮も含めた慎重な姿勢が望まれるところだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿