2011年6月3日金曜日

【疑惑のベント】人為的に水素爆発を誘発した政府・東電の「重大な過失」


1.アレバ社の技術者によって既に指摘されていた建屋内へのドライベント(4月1日時点)

BELTIXが独自に入手した資料によれば、既に2011年4月1日の時点で、福島第一原子力発電所の事故対策支援のためにフランスから来日していた、フランスのアレバ社(世界最大規模の原子力企業で、現在、汚染水処理システムの設置を東京電力から受託して作業中)の技術者である、Matthias Braun氏は、「The Fukushima Daiichi Incident」(福島第一事故)というレポートの中で、建屋内のドライベントが行なわれたことを指摘している。(このレポートは、アレバ社が米国で行なった、招待者のみが参加できる限定的な報告会で配布された資料である。)

 
 「The Fukushima Daiichi Incident by Matthias Braun @AREVA.com」から抜粋

BELTIXがこの資料を入手した時点では、筆者であるMatthias Braun氏が、このレポートについて、あくまで乏しい資料に基づいて事故事象を時系列で分析したものである、としていたこともあり、日本国内ではあまりその重要性は指摘されていなかった。

しかしながら、このレポートが公表されてから2ヶ月以上も経過した6月3日、現代ビジネスオンライン「経済の死角」で、「隠されていた決定的ミス 東電はベントの方法を間違った!」 - MIT(マサチューセッツ工科大学)とアレバ社が指摘 - というセンセーショナルな記事が登場した。

報告されている内容は、実際の記事をお読みいただきたいが、記事中でこのレポートの存在を知らされた田中三彦氏は、「水素爆発がオペレーションフロアで起きたことは判明していますが、この資料には<ベントした放射性物質を含んだ水蒸気をオペレーションフロアに向けて吐き出した>とあります。東電は、水蒸気をフィルターにかけて煙突から外に出した旨の説明をしていたはず。」とコメントしている。田中三彦氏はさらに続けて「私も驚いて、間接的に東電に確認してもらうと、『何かの間違いです』との回答でした。しかし、原子力の専門家集団であるアレバが、間違いなくそう書いている。資料の通り、3月12日午後2時半に建屋内でベントを行い、3時36分に爆発したとすると、辻褄は合うんです」と語っている。

これはいったい、何を意味しているのだろうか?

2.東電が発表した「設計の不備による排気水素の逆流」という苦しい言い訳

先の「経済の死角」が発表されてから、ほぼ寸刻をおかずに、東電からこのような発表が行なわれたらしい。「1号機爆発、排気水素の逆流原因か 東電『設計に不備』」(2011年6月4日3時2分 asahi.com)という記事によれば、「格納容器の損傷を防ぐ目的で行なわれたベント(排気)で建屋外に出したはずの水素ガスが、別の排気管を通じて建屋内に逆流したことから起きた疑いが強いことが分かった」のだという。より詳しくは当該記事をお読みいただきたいが、よくもまあ、事故後3ヶ月近くも経ってから、また、アレバ社の技術者のレポートで指摘されてからも2ヶ月以上経過した時点で、このようなとぼけた説明を思いつくものだと感心させられる。新しい事実(本来は新しくも何ともないが、彼らにとっては幸いにして国民の耳に届いていなかった情報だ)が発覚すると、次々に驚くべき言い訳を考え出してくる。これはもはや、東京電力の社風、独特のカルチャーと呼ぶにふさわしい。我々国民と彼らの文化は根本的に異なっているに違いない。文明の衝突、といってもいい。




ともあれ、原子炉の「設計に不備」があったという重大な事実を認めることは、原子力発電事業者としては決定的な欠陥となる。今さらながら、アレバ社のレポートや、たかが雑誌マスコミのゆさぶりに負けて、電子力発電事業者としての資質が疑われ、また、国の原子力政策にも影響を与えかねない重大な事実をなぜ公表したのか??

簡単に言えば、ただの「嘘」としか思えない。失礼ながら、もう沢山の嘘と言い訳に付き合わされてきた我々としては、何事も鵜呑みにすることはできなくなっている。それではなぜ、こんな「嘘」をつかねばならないのか。

あえて言おう。東京電力は、自社の技術的な欠陥を認める(フリをする)ことで、もっと大きな事実を隠そうとしているからだ。この発表によって、マスコミやフリージャーナリスト、あるいはBELTIXなどのブロガーの攻撃を甘んじて受けるというリスクを冒さなければならないという理由は、政府と東京電力があえて、恣意的に建屋内へのベントを行なったからにほかならない。あくまでも憶測であるが、許しがたい「嘘」に対して対抗するにはこうした方法しか思いつかない。

3.放射性物質の広域拡散を恐れ、あえて建屋内にベントしたのではないか?

結論から先に申し述べる。福島第一原子力発電所の第1号機および第3号機の水素爆発は、政府および東京電力の判断ミスによる重大な過失事故である。要点は、ドライベントに伴う放射性物質の広域拡散を恐れた政府および東京電力が、通常であれば排気筒を通じて行なうベント作業を、あえて、排気筒からではなく、原子炉建屋内(オペレーションフロア)に放出し、結果的に、建屋上部が吹き飛ぶ水素爆発を誘発した。このことは次のような背景と課題で説明できる:

(1)背景となった原子炉の事象

全電源喪失によって冷却不能に陥った1、2、3、号機の炉心が溶融
冷却水から露出した燃料棒過熱によって圧力容器の温度・圧力が急激に上昇
同時に燃料棒損傷によって圧力容器内に大量の水素が発生
緊急にドライベントを行なって圧力容器の破壊を防ぐ必要性

(2)ドライベントを行なう上での課題と懸念

ドライベントを行なうことは大量の放射性物質を広域に拡散させる恐れがある
近隣住民の直接被ばくを最小限に抑えなければならない
ベントを決定する時点ではまだ10kmの避難指示エリアからの避難が終わっていない
しかしながら、圧力容器の爆発的な破壊は防がなければならない

つまり、ドライベントによって圧力容器の爆発的な破壊を防がなければ、まさしくチェルノブイリ級の放射能汚染という、国際社会の非難を浴びるに違いない、最悪の原子力事故へと発展する。しかしながら、避難が終わっていない近隣住民の直接被ばくは最小限に抑えるとともに、大気中への放射性物質の拡散も可能な限りその範囲を小さく留めたい。この2つの相反する課題を解決するには、どうすれば良いのか?

そして、政府と東京電力が選択した「最善」の処置が、原子炉建屋内へのドライベントという「画期的かつ無謀な」手段である。政府と東京電力のどちらがこのアイデアを思いつき、あるいは決定したのかは、無論のこと、明らかではなく、恐らく、これからも明らかになることはないだろう。いずれにせよ、直接大気中へドライベントするのではなく、建屋内へ放出すれば、建屋内には恐るべき量の放射性物質が充満することは目に見えている。しかしながら一方で、大気への拡散量と拡散スピードは(有為に)減少させることができ、近隣住民の被害を少なくすることができる。建屋内に充満している放射性物質は、後に換気装置を働かせることにより、(出来る限り低濃度の状態で)徐々に大気中へ放散させようという思惑であったに違いない。さて問題は、この時点で、政府・東京電力がどこまで建屋内の水素爆発の危険性(蓋然性)を予測していたかである。理論的には水素爆発の可能性があることは充分認識されていたに違いないが、圧力容器または格納容器そのものが水素爆発を引き起こすリスクに比べれば、その蓋然性はかなり低いと見込んでいたに違いない。政府・東京電力が仮にこのような無謀な判断をせずに、通常の事故対応手順に基づいて大気中へ直接ドライベントしておけば、現在のような悲惨な事態に陥ることは避け得たのではないか。仮にこの憶測が正しいとすれば、まさしくこれは、人為的な災害というべきで、建屋内の水素爆発の蓋然性が高いと認識した上での行為であれば、「未必の故意」として、あるいはその危険性を見抜くことなく行なったとしても重大な「過失」として、その責任が問われなければならないだろう。



<参考:1号機・3号機のドライベント前後の時系列メモ>

3月11日 20:50 福島県対策本部が半径2kmの住人に避難命令
3月11日 21:23 半径3kmの住民への避難指示 半径10kmの屋内退避
3月12日 03:05 海江田大臣/寺坂保安院長/東電小森常務記者会見で1号機に対してベント作業実行を発表(まだ政府からベント指示はでていない)
3月12日 03:12 枝野記者会見でベント指示と発言 (法的命令のニュアンスではない)
3月12日 05:44 菅総理から10km圏内住民への避難指示
3月12日 06:08 菅総理 陸自ヘリで官邸を出発  
3月12日 06:50 海江田大臣が、福島第一原子力発電所第1号機及び第2号機の原子炉格納容器内の圧力を抑制することを命じた。
3月12日 07:11 菅総理福島第一到着
3月12日 07:23 東電武藤副社長による説明・池田副大臣同席
3月12日 08:04 菅総理陸自ヘリで、同原発出発
3月12日 08:30 東電がベント実施を政府に通報
3月12日 09:04 ベント作業着手 (東京新聞 3/28)
3月12日 14:20 1号機ベント実施
3月12日 15:36 水蒸気爆発
3月12日 15:45 この段階でまだ避難は完了していない
3月12日 20:41 3号機ベント実施
3月13日 09:20 3号機ベント実施
3月14日 05:20 3号機ベント実施
3月14日 07:44 3号機水素爆発
(注:様々な資料に基づいていますが、必ずしも正確ではないところもあるかと思います)

2011年5月23日月曜日

CTBT高崎観測所データと福島第一原子力発電所の重大事象との関連性


1.放射性物質の拡散を時系列で把握するベンチマークとしての有効性

福島第一原子力発電所の事故現場から放出されている放射性物質の拡散については、あちこちから膨大な実測データが報告されてきている。これまで政府と東京電力が恣意的に隠してきた(と疑われる)様々な重大事象が、どれほど環境汚染と国民の健康を蝕む外部・内部被ばくの危険をもたらしているか、その関連が国民自身の手で明らかにされようとしている。インターネットを通じた不定形のネットワークにより、各地からもたらされるデータが相互に参照・検証、補完されて、「集合知」(Collective Intelligence)として形成されていく様子はまさしく目を見張るものがある。とはいえ、あまりに多様で測定条件がまちまちなデータ群に遭遇すると、一方で、「知」の拡散が生ずるという弊害も生まれてくるわけで、「集合知」を「実践知」(Practical Intelligence)へと転換するエネルギーとベクトルを損失することにもつながりかねない。いずれにせよ、断片的で信頼性に欠ける公的データと、ネット上に溢れている膨大な情報の中で、どのデータや数値をベンチマークとして信頼するかは非常に難しい問題である。氾濫する情報の中から仮にベンチマーク足り得るデータを選ぶとすれば、CTBT高崎観測所の放射性核種探知状況はその有力な候補のひとつだろう。国際的な観測網の中でシステム化され、(日本国内の)ドメスティックな事情(政治的、社会的な思惑)に影響を受けることがない(と願うのだが)。CTBT高崎観測所から提供される、定点観測・高感度・24時間ダストモニタリング・356日ノンストップ、という貴重なデータは、文科省からようやく公表されるようになったWSPEEDI(広域汚染状況予測値)を、実査データとして検証する意味でも重要だ。本ブログでも再三指摘している通り、重要なデータが一部欠落(3月14〜15日の1日分のデータが欠落していること。また、かつて測定値が公表されたヨウ素135およびプロメチウム151が測定器の誤読として削除)していることが惜しまれるものの、今後とも継続的なデータ公開を望みたい。

2.CTBT高崎観測所データから見る福島第一の重大事象との関連性

CTBT高崎観測所の放射性核種探知状況は、(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センターから第11報として5月17日時点のデータが公開されている。(ただし最新版は、7月26日時点の第21報。2011年7月29日現在)


下記のグラフはこの最新のデータをBEITLXがグラフ化(横軸は日付/縦軸はμBq/㎥の対数表示)し、観測データが著しいピークを示したところを事象1〜事象5としてプロットしたものである。

(画像をクリックすると拡大)

放射性核種それぞれの経時変化については、専門分野の方々のご意見を仰ぐとして、BELTIXはこの5つの検出ピークについて、福島第一原子力発電所の事故に関わる重大事象との関連性を考えてみたい。

【事象1】3月15〜16日

これは言うまでもなく、3月11日の震災・津波による全電源喪失に伴う第1〜第3号機の炉心溶融に伴う圧力容器と格納容器の損傷、ドライベント、1、3、4号機の水素爆発など一連の事象による放射性物質の爆発的な拡散を示すピークである。これに先立って、既に東京電力から発表されている通り、第1号機では事故発生からわずか16時間後の3月12日午前6時には、燃料棒がほぼ100%溶融したメルトダウンが起こっている。さらに3号機については、その爆発時の様子から単なる水素爆発ではなく、核爆発(もしくは「核暴走」)が起きたのではないかという疑いも捨てきれてない。そのひとつの根拠として、(検出器の誤読としてデータから削除された)ヨウ素135の放出が記録されていた。

【事象2】3月20〜22日

このピークが検出された期間、特に第3号機の周辺で様々な事象が起こっていたことが報告されている。炉内温度が三百数十度まで上昇しており、原子炉建屋から灰色の煙が上がるのが確認され、消防ポンプ車による大量の放水が行なわれている。最も重要な点は、3月21日に圧力容器の炉圧が急激に減少し、その後短時間で圧力が回復するという変化が東京電力から公表されていることだ。この時点では全ての計測機が満足に作動しておらず、この変化も計器不良の影響であると(あえて)見過ごされているようだが、やはりこれは、3号機のメルトダウンにより圧力容器に大きな損傷が生じたことを示しているように推測される。圧力容器の一部に穴が開き、炉内の水が一気に格納容器に漏出することで圧力が下がり、その後の注水の増量によって炉圧が回復したと見るべきだろう。このことによって格納容器にも大きな損傷が生じ、放射性物質が大量に放出された。あるいは、公表はされていないが、秘密裏にドライベントが行われたという疑いも否定できない。既に2号機3号機のいずれもメルトダウンしている可能性が極めて高く、特に3号機は現在でも圧力容器の不規則な温度上昇が報告されている。(2号機について特定することはできないが)恐らく、3号機のメルトダウン(全炉心溶融)は3月20〜22日に起こったのではないかと想像される。


注:下図は@ishtaristさんのtwitpic「官邸資料 (http://www.kantei.go.jp/saigai/201103260800genpatsu.pdf) p57-58より、3号機原子炉の圧力変化をExcelでプロットしてみました。」を借用させていただきました。

(画像をクリックすると拡大)

【事象3】3月29〜31日

このピークは何なのだろうか。この期間で特筆すべきことは、外部電源が復活したことによって、各号機への注水が消防用ポンプから仮設電動ポンプへと順次切り替えが行われた時期にあたっているのみで、各号機とも安定した注水が行われて温度や圧力に大きな変化は現れていない。ここで最も気になるのは、特にテクネチウム99mの濃度が突出していることだろう。6.02時間という極めて短い半減期をもつテクネチウム99mが大量に検出されているということは、少なくとも原子炉(圧力容器)からの直接の放射性物質漏えいに由来すると考えられるわけで、この点について明確な知見をお持ちの方からご意見をいただきたいところだ。

【事象4】4月17〜19日

無人ロボットが原子炉建屋に入って高線量を検出した前後にもピークが観測されている。ドアの開閉から建屋内の汚染が空気中に拡散したという影響も少しあると推定されるが、これほどのピークとして観測されることから見て、もっと大きな事象があったに違いない。

【事象5】4月20〜22日

目下の最大の疑問は、4月20〜22日のピーク。テルルなどの核種の変動は少ないが、ヨウ素、セシウムがかな り多く検出されている。これはあくまでもBELTIXの(根拠の薄弱な)推測に過ぎないが、先に挙げた【事象4】(4月17〜19日)の何らかの事象が、この時点で顕在化したのではないかと疑っている。原子炉そのものの変化については、政府や東京電力から特別な発表があったわけではないものの、「状況証拠」として、無人機による原子炉建屋周辺の撮影が慌ただしく行われ、また、避難区域を警戒区域とする旨の発令が行われている。警戒区域の発令に関して、周辺の深刻な放射能汚染状況が徐々に明らかにされつつあったという背景はあるにしろ、急きょ警戒レベルが高まったという印象を拭いきれない。また、(再臨界の証拠として疑われた)クロル38の検出に関する誤認の発表も時期を同じくしている。さらなる炉心溶融によるリスク、あるいは再臨界の恐れなど複合的な事象が懸念される切迫した事情が背後にあった可能性がある。

以上、CTBT高崎観測所のデータのみを参考として、福島第一原子力発電所の重大事象との相関を推測してみた。CTBT高崎観測所のデータを公開している(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センターでは、これらのピークを風向きや天候などに影響されたものとしている。したがって、先に挙げた事象1〜事象5は、その他の関連する情報に基づいて、あくまでもBELTIXが独自の判断で 推定・推測したものであることをお断りしておく。

2011年5月14日土曜日

【放射線量基準には何の法律的な根拠もない】:これがニッポンの現実だ。


1.公衆の放射線被ばく基準値を成文化した法律は存在しない。

驚いたことに、日本のいかなる法律にも(放射線業務従事者を除き)一般人の被ばく線量限度を定めた条文がないことが分かった。

唯一、根拠となるのが、「原子力基本法」に基づく関連法の中で、「放射線障害の防止に関する法律施行規則」における「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」の中に、排水、廃棄の基準を定める規則第19条があり、線量限度として「1年間に1ミリシーベルト」とある。これを敷延して「公衆が安全な線量」として拡大解釈しているに過ぎない。「医療法」、「環境保護法」など、国民の健康を守るべき法律は、放射性物質に関する全てを「原子力基本法」に丸投げしており、それを受けた「原子力基本法」は「原子力を動かすための法律」であり、国民の健康などに何の関心も払っていないのだ。

政府がさかんに「暫定値」と繰り返し、その根拠をつねにICRP勧告に求めている理由は、これまでのICRP勧告を「国内制度へと受け入れる」としながらも、いかなる法律的な条文化も行なってこなかったからにほかならない。さらに言えば、「20ミリシーベルト」への引き上げという蛮行も、(現行ではまだ正式な見解すらまとめきれていない)「ICRP 2007年勧告」の非常時基準を拡大解釈して借用せざるを得ない。なぜなら、暫定的でない基準など初めから持ち合わせていないのだから。

またこれは既にご承知の通り、「食品衛生法」でも食品に含まれる放射性物質の含有基準や摂取基準を明記したものは存在していない。厚生労働省が、これまでいったいどのような根拠で食品を管理してきたのか知らないが、とりあえず今は、内閣府の食品安全委員会が「適当に」(適切ではなく、あくまでも適当に)暫定基準を発表しているに過ぎないのだ。

残念ながら、諸君。日本という国は、被爆国でありながら、これまで国民を放射性物質の被害から守ろうとしたことは一度もなかったのだよ。

2.環境汚染に関する放射性物質の基準もない。

直接人体が被ばくする健康被害に対する(法律的な)基準が存在しないのだから、環境汚染に関しては推して知るべし。最も頼りになりそうな「環境保護法」を参照すると、その第十三条(放射性物質による大気汚染等の防止)の記述は「放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止措置については、原子力基本法その他の関係放棄で定めるところにある」と「原子力基本法」へ丸投げ。

それでは、と、「土壌汚染対策法」を眺めてみても結果は同じ。その第二条に「この法律において『特定有害物質』とは、鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。」という一文があるのみで、他に放射性物質に言及した条項は見つからない。

福島県産の農作物や畜産物を汚染し、また、遠く静岡県の茶葉までセシウムの汚染が広がっていることから、少なくとも、農業用地の土壌汚染くらいは何らかの基準が設けられいるだろうと思ったが、案の定、あてがはずれた。「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」の第二条の3項に曰く、「この法律において『特定有害物質』とは、カドミウム等その物質が農用地の土壌に含まれることに起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されるおそれがある物質(放射性物質を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。」のだそうである。


3.食品の汚染基準は「暫定」にすら当てはまらない

残念ながら、福島県内ばかりでなく、各地の農畜産物に放射能汚染が拡大している。つい先日は、静岡県の茶葉から高濃度のセシウム汚染が検出されたことが報道されている。食品は我々の健康に直接の被害を及ぼすものであるだけに、その安全基準は厳しく守られるべきなのは言うまでもなく、放射能も例外ではない。精緻に検討が加えられ、法制化された基準値によって、その生産や製造、出荷・販売、摂取が管理・監督されなければならないはずだ。しかしながらここでもその原則は破られていた。食品の安全性を担保するはずの「食品衛生法」には一切放射性物質の汚染に関する条項が存在しない。現在、政府が「暫定値」として発表している汚染基準は、2010年8月23日に原子力安全委員会が決定した「原子力施設等の防災対策について(の改訂)」において定めた、第5章3項「防護対策のための指標」の(3)飲食物の摂取制限に関する指標に拠るものである。ちなみに、この「「原子力施設等の防災対策について」とは、その名が示す通り、今回の福島原発事故などによる災害に対応した原子力委員会の提言(もしくは意見具申)としての性格であり、それがそのまま食品の安全基準として適用され得る法的な裏付けはない。つまり、政府が公表している「暫定値」は、あくまでも「原子力災害特別措置法」が発令されたことによる緊急事態の概念に基づいており、その緊急事態に対して一定の超法規的な権限をもつ内閣総理大臣の判断で決定されているものと解釈されねばならない。話を単純化するために一例を挙げると、たとえば水道水や牛乳の安全基準が300Bq/kgとされており、これは先に述べた原子力安全委員会の提言(意見具申)に基づいているわけだが、仮に政府(総理大臣が)事態の現況や緊急性を勘案して3,000Bq/kgまで認めることにしようと決めれば、なんの苦もなく基準値を変えることも可能なのである。なぜなら、「原子力特別措置法」という伝家の宝刀があり、それに対抗すべき法律的な基準が存在しないからである。何とも「国」のとって都合の良い、融通無碍な「暫定値」であることだろうか。

---------------------------------------------------------

BELTIXは法律の専門家ではないので、以上のことは、あくまでも個人的に調べた生半可な知識の範囲で発言している。また、これらは「放射線業務従事者」に対する基準は全て除外して、一般公衆(パブリック)に適用すべき法律に関して述べている。法律家の中で詳しい方がおられれば、ぜひ、私の間違いをご指摘いただきたい。むしろ、大きな誤解をしているとすれば望外の幸せである。

(2011年5月14日更新)

2011年5月13日金曜日

CTBT高崎観測所データの存在は高く評価されるべきだ


1.事故発生以来時系列で放射性核種検知データを提供している唯一の機関

これまでこのブログでは、「高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況」(4月29日)、「CTBT高崎観測所データがもたらす困惑と疑惑」(5月7日)、および「CTBT高崎観測所データがもたらす困惑と疑惑 - 続報」(5月9日)と、3つの記事を提供してきた。これらの中で言及したデータによって、我々は、福島第一原子力発電所の事故現場から、膨大な量の放射性物質が大気中に放出されていたことを詳細に知ることとなった。さらに重要な点は、これまで東京電力や政府の発表では一切語られることのなかった、ヨウ素やセシウム以外の多様な放射性物質の拡散が詳細に報告されていることだろう。東京電力と政府は、ことさらヨウ素とセシウムのみに国民の関心を導き、さらに単位時間当たりの外部被ばく量の目安でしかない「シーベルト/時」の値だけで汚染のストーリーをまとめてようとしてきた。それは確かに重要な視点のひとつではあるが、瞬間的な空間線量の把握だけでは、被曝の危険から身を守ることはできない。CTBT高崎観測所が、定点で、しかも24時間フルタイムで大気中のダストを捕捉し、放射性核種の総量/日を報告してくれていることにより、我々は初めて汚染の総体を把握することができるようになった。しかも、毎日の時系列データが記録されていることによって、福島第一原子力発電所で起きている事故(事象)イベントと(少なくとも「日」単位で)関連づけた分析ができるようになっている。これまで発表された報告書に但し書きされている通り、記載されたデータは天候やその他の影響を受けており、「定量的」な正確さが保証されていないことは理解できる。しかしながら、同じく報告書にある通り、それらは「定性的」に正しい指標であり、(この時期、世界中で他にいかなる核関連事象も起きていないことから)ほぼ100 %福島の原発事故に関連した放射性核種の検知データであろうことは疑いようがない。

これまでのデータ評価・分析に関しては「中鬼と大鬼のふたりごとで他の資料と関連させて詳しく言及されているので、そちらをご参照いただきたい。

いずれにせよ、世界60ヶ所の観測拠点をもつCTBTモニタリングネットワークを基盤として、おそらく最も信頼できる放射性核種の国際監視システムからこのような貴重なデータが(非公式ではあるものの)公開されていることは高く評価すべきである。ようやく文科省でも大気中のダストモニタリングを本格的に始める姿勢を見せており、バリウム、テルルなどどこれまで発表されることのなかった核種のデータが「散発的に」公表されるようになってきた。これも恐らく、インターネットなどを通じてCTBT高崎観測所のデータが広く知られるようになったことも少なからず影響しているように思う。検知システムを運営・管理されている高崎観測所の方々、ならびに(財)国際問題問題研究所/軍縮・不拡散促進センターに御礼申し上げたい。是非、今後も、更新されたデータの公開を続けていだだくようお願いする次第である。

2.2011年5月13日付で公開された最新データ

 さて、2011年5月13日付で(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センター(CPDNP)からCTBT高崎観測所における最新の放射性核種探知状況が公開されている。


この最新の報告書の中で、【参考】として「粒子状放射性核種観測作業」のプロセスが紹介されている。

高崎観測所では、大気を24時間かけて特殊なフィルターに通過させて捕集し、その後、当該フィルターを、24時間放置して自然放射性核種を減衰させた後に、検出器で24時間かけて放射性核種の種類と濃度を割り出すためにガンマ線のエネルギー分布を測定する。これらの大気の捕集から測定までの作業はコンピューターの自動制御により行われるが、丸3日かかる。その結果はウィーンのCTBT事務局に自動送信され、解析される。

なるほど、これは知らなかった。このプロセスをより良く理解するためには次の様な写真と図が役に立つ(これらはいずれも、2009年7月に開催された「包括的核実験禁止条約(CTBT)にかかわるシンポジウム - 核実験監視技術とその科学的利用 - 」のプレゼンテーション資料から抜粋させていただいた)。



つまり、 大気中のダストを捕捉(捕集)してから測定までに72時間かかるわけで、その結果がウィーンのCTBT事務局に衛星回線で自動送信され、その後に、解析されたデータが高崎に返送されてくるというシステムなのだ。ということであれば、5月10日時点のデータが13日に公開されるというのは、かなりリアルタイムな情報ということになる。またしても、その迅速な処理スピードに敬意を表したいところだ。とはいえ、まだ、このブログで書き連ねてきた「空白の1日」という疑問は解決されていない。

3.「空白の1日」のデータは永遠に失われてしまったのか?

同じく5月10日時点の報告書には次のような記載がある。

なお、別添の「CTBT高崎観測所が測定した粒子状放射性核種の放射能濃度」のテーブルから3月14~15日のデータが欠落しているが、これは、3月16日午前~午後にかけて発生した高崎地域の計画停電により放射線検出器の冷却システムが停止し、ウィーンのCTBT事務局からの遠隔操作による同システムのリセット・再起動等に時間がかり測定できなかったため。17日以降(14〜15日のデータ以降)は、計画停電の発生に速やかに対応したため、問題発生を回避できるようになった。

この間の時間的な経過を確認する意味で3月19日時点のデータを再掲してみよう:


確かに、CTBT高崎観測所が立地する高崎市綿貫町では、3月16日の9:20〜12:20の3時間にわたって計画停電が実施されていることはBELTIXの調査でも確認されており、少なからずその影響を受けたことは事実だろう。だとすれば、3月14日(3/14/15:55〜3/15/15:55)にフィルターで捕集された試料は、停電があった当該時刻には、上記の②Rn崩壊(24Hr):フィルターを、24時間放置して自然放射性核種を減衰させるプロセスにあったことになる。ここで電源が喪失し、②Rn崩壊、③γ線計測というシークゥエンスが停止して、再起動に手間取ったためにデータが喪失してしまったということになる。これが事実であるとしても、②のRn崩壊プロセスが一時停止したのみであれば、仮に再起動が遅れたにしろ、③γ線計測は翌日3月17日(3/16/15:55〜3/17/17:11)の時間帯で行われたわけであるから、多少データの精度が損なわれたとしても何らのかたちで計測データが保存されていてしかるべきだと思うのだがどうだろう。

無いものねだりをするつもりは毛頭ないのだが、どこかに検知データが残されている可能性はないのだろうか。この「空白に1日」には、福島第一原子力発電所において、前日の2号機、3号機のドライベントに引き続いて、3号機の水素爆発(あるいは核暴走?)が立て続けに起こっている。「空白の1日」のデータが健全であれば、一連の事象からどのように放射性物質が放出されたか、より正確な判断を引き出すことができる。仮に完全なかたちではないにせよ、何らかの記録があれば全て保存しておいていただきたい。今後、事故委員会が発足し、緻密な事象分析と原因の追求が行なわれる際、CTBTの資料が重要な証人としての役割を果たすと信じているからだ。ぜひ、一国の利害にとらわれることなく、国際的な視点から今回の「事件」を検証する立場を貫いていただきたいと望むものである。

2011年5月9日月曜日

CTBT高崎観測所データがもたらす困惑と疑惑 - 続報


1.ヨウ素135/プロメチウム151は検出器の誤認?

(財)日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターは、2011年5月9日付で「高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況 (CTBT国際データ・センター(IDC)によるデータの修正のお知らせ)」という文書を公開した。以下にその文書をそのまま転載させていただく:
 ..........................................................................................................................

当センターのホームページにCTBT高崎観測所による3月19日、27日及び29日時点のものとして公表されました放射性核種探知データの内、3月15日から16日(日本時間)にかけて採取された大気サンプルの測定結果を示した観測データに関して、「ヨウ素(I)135が異常な高濃度の測定値(370,000mBq/m3)を示しているが、この測定値は果たして正確であるのか。」等の複数の照会が5月第一週に同センターに寄せられました。

これらの照会を受けて、同センターは早速、日本政府経由でウィーンのCTBT準備委員会技術事務局の国際データ・センター(IDC)に事実関係を照会しましたが、この度IDCより、3月15日から16日の測定結果のうち、I-135及びプロメチウム(Pm)151は、同日に発生した高崎観測所の一定時間の電源喪失等による検知システムの誤認であり、これらの放射性核種は実際には検知されていないとの回答がありました。

従いまして、当センターから公表致しました3月19日、27日及び29日時点のデータをご参照いただく場合には、上記のとおり、3月15日から16日の測定結果のうち、I-135及びPm-151については誤認の扱いとしてご利用いただきますようお願い申し上げます。

なお、CTBT準備委員会技術事務局に対しては、日本政府より、過去に報告されたデータも含め、今後、誤認が判明した場合には、直ちに報告するよう依頼しており、このような報告があった場合には、速やかに当センターのホームページで周知させて頂きます。
(以上)
..........................................................................................................................


さて、この発表をどのように受けとればよいのだろうか。そうか、やはり検出機器に不具合があったのか、と簡単には納得できない。 たとえばBELTIXの疑問を示せば次のような点が挙げられる。

(1)停電があったことを示す記録に整合性がない

検知システムによる誤認の原因として「一定時間の電源喪失等」が挙げられているのだが、少なくともこの発表が行なわれるまで、当該データが含まれている検出時期は「3/15/15:55 - 3/16/15:55」と明記されたままであり、この24時間以内に「電源が失われた」という記述はされていない。確かに、3月16日に一部電源喪失があったことを窺わせる記載が、放射性希ガス(キセノン)放射能濃度の検知記録に残されている。「3/16 18:04 - 3/16 22:04 停電のため測定不能」という記述がそれだ。しかしながら、この電源喪失時間は、ヨウ素135とプロメチウム151が誤認されたという時間帯(「3/15/15:55 - 3/16/15:55」)とは約9分の誤差があり、もし停電を原因とするならば、この2つの記録に整合性がなければならないはずだ。

(2)仮に停電の影響による検出器の誤認であれば他の核種のデータの信頼性が疑われないのはなぜか

検出器そのものが停電によって誤動作したというのであれば、他の核種の検出にも誤認が生ずるはずであり、なぜその点が検証されていないのか疑問が残る。

(3) 国際データセンター(IDC)に確認しなければ確認できないというは不可解

高崎観測所からCTBTの国際データセンター(IDC)へのデータ転送は次のような仕組みとなっているという(下図は「CTBT国際検証システムへの協力と極微量核物質分析技術開発について」から転載)。



確かに(高崎観測所などから得られた)データは直接IDCのデータセンターのデータベースへ衛星通信で転送され、ガンマ線スペクトルとその解析データが(日本の)国内データセンターのデータベースへ送り返されてくる。そのスペクトルデータを(国内で)解析した上で核種分析と放出源の特定が行われるというデータフローとなっている。こうしたデータ解析プロセスにおいて、IDCのデータセンターへ照会しなければ検出器の誤動作を確認できないというのが理解できない。スペクトルに出現している核種ごとのピーク値を「専門家による解析」を行なうというフィードバックが働いているはずだからである。より単純に言えば、もともとのデータ検出が行われているのは高崎観測所なのであるから、「一定時間に発生した電源喪失等による検知システムの誤認」は国内で容易に判定できるのではなかろうか。それが、ほぼ2ヶ月の間見過ごされ、放置されていたというのはどう考えても腑に落ちない。

2.3月15日(3/14/15:55 - 3/15/15:55)のデータの空白には一切の説明がなされていない

さて、もうひとつの大きな疑問である3月15日(3/14/15:55 - 3/15/15:55の24時間)のデータ欠落の原因は何なのか。この24時間については(福島第一原子力発電所で起こったと同様な)「全電源喪失」(ステーション・ブラックアウト)が起きたとでもいうのだろうか。残念ながら、この件についての説明は一切行なわれていない。データ公表からほぼ2ヶ月を経過した時点で、ヨウ素135とプロメチウム151の検出が誤認だったという発表を行なうのであれば、この点についても明確にされなければならないのではないか。

この空白の24時間についても、追って何らかの原因が発表されるだろう(と期待している)が、どのような説明がなされるか楽しみなことではある。どうやら、日本の重要なシステムは緊急時になると揃って誤動作するようにプログラムされているらしい。「緊急時対策支援システム(ERSS)」と「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム (SPEEDI)」が、福島第1原発事故で本来の機能をまったく果たせなかったように。

3.備考(2011年5月9日に加筆)

総合研究大学院大学助教授素粒子原子核専攻/高エネルギー加速器研究機構助教授の野尻美保子さんが、直接高崎にご連絡されたらしく、ご自身のTwitter「野尻美保子(災害モード)」@Mihoko_Nojiriで、この間の経緯について解説しておられる。勝手ながらツイートされた内容を一部ご紹介させていただくと:

[CTBT高崎の件] CTBT 高崎は本来の機能は遠隔での核実験を探知するもので、大量の空気をエアフィルターにかけて、測定装置(ガンマ線検出器)にかけ自動的に取ったスペクトルデータを本部(ウイーン)で解析しているらしい。

[CTBT] ところが、15日は大量の普段ではない放射線が押し寄せたので、結果的にエアフィルターにまともじゃない量の放射性核種がついて、これを観測装置にほりこんだら、ガンマ線カウンターが鳴りっぱなし状態になった。

[CTBT] もしオンサイトに人がついていて自由にいじれるシステムだったら、たとえば1時間ごとにフィルター変えるとか、空気を控えめにフィルターかけるとか、フィ ルターの一部をつかうとかすれば、測定ができたはずだが、設置目的から現場の人はいじれないようになっているのではないかと思う。
[CTBT] で、日本側としてはデータはCTBT のもので、設置目的から詳細開示はむりなんですごめんなさいね、という話だった。そもそもデータをあきらかにするのが異例らしいんだけど、今日本のせいで 核実験が探査できないくらい日本がよごれちゃってるので、いいでしょうということらしい。

[CTBT] で今回は残念だったけど、今くらいおちついてくると、ちょっとしかない核種でも発見可能なので、炉の日々の状態をみるのにはいいかもしれません。というわけであんまり怒らずに、次のデータをまちましょう。(小放出とかあっても見つけてくれる) 以上です。

停電のこともいっていました。これと、今した話(も向こうはしてた)との関係はよくわかりません。

停電と核種の関係がわからんですよね。いずれにしても、あんなとんでもない量Bq ガンマ線カウンターがなってたら、エネルギー分解能なんて gdgd でしょう。Ge のγ線カウンターだったら時間分解能悪いし

しかし、思ったんだけど、担当の人は怖かったろうな、と思うんですよ。普段なんにもないところに、大量の放射性核種が押し寄せてくるのが見えるわけで。僕 らは total の線量だけみてるから、上がった上がった程度だけど、あそこの人は、ああ、あれもこれも入ってるって。

大事なことだからもう一変いうけど、今空間放射線量は地上からくる部分が大半だから、それの上がり下がりをみても、あまり原子炉の状況はわからない。炉の状況(新たな放出)に興味があるなら、エアフィルターや降下物のデータを見た方がいいと思う。

2011年5月7日土曜日

CTBT高崎観測所データがもたらす困惑と疑惑


1.これまでの経緯

このブログで、2011年4月28日に「高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況」と題する記事を掲載したところ、思いがけず多くの方に閲覧していただき、ちょっとした物議を醸すこととなった。そもそも、beltixがこれまであまり考えることもなく見過ごしてきたCTBT(包括的核実験禁止条約)に興味をもった動機は、2011年4月8日の段階で、以下のような報道に接したからである:

(要約)大気中の放射性物質を観測するCTBT(包括的核実験禁止条約)の機構準備委員会は7日、福島第1原発から放出された放射性物質が、2週間で北半球全体に拡散したと発表した。委員会が世界63カ所の施設で観測した結果、放射性物質は、3月12日に群馬・高崎市で観測されて以来、ロシア東部を経て、16日にはアメリカの西海岸へ到達した。

この報告は日本ばかりでなく、世界中のマスコミ各社から報道されており、ご存知の方も多かったことと思う。これについては「FUKUSHIMA-RELATED MEASUREMENTS BY THE CTBTO (包括的核実験禁止条約機関による福島関連計測)」でその詳細を知ることができる。

下図の動画は、Ausbreitungssimulationen von Radionukliden, emittiert durch den Reaktorunfall in Fukushima, Japan(福島の原子炉事故から放出された放射性核種の伝播シミュレーション)」(原文ドイツ語)から抜粋した、事故直後(3月12日)から3月28日までの(0〜500m)大気中の放射性物質拡散状況を世界60ヶ所のCTBT観測所からのデータに基づいたシミュレーションである。


2.CTBT高崎観測所の存在とその位置づけ

高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況」で既に触れているが、日本には群馬県高崎市にCTBT放射性核種探知観測所が置かれており、世界中の観測所とネットワークを構成しており、そこで観測されたデータは逐次、オーストリアのCTBTO(包括的核実験禁止条約機構)へ送付され、データの解析・評価が行なわれて報告書が作成されている(らしい)。「らしい」と書くしかない理由は、もともとこれらの報告書が、基本的には非公開を原則としているためである。その理由は、そもそも包括的核実験禁止条約(CTBT)とは、宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる空間での核兵器の核実験による爆発、その他の核爆発を禁止する条約である。1996年9月、国連総会によって採択され、日本は1996年9月に署名、1997年7月に批准した。2010年5月現在で181カ国が署名、154カ国が批准しているが、発効要件国(核保有国1を含む44か国)の批准が完了していないため未発効である。そのため、CTBTO(包括的核実験禁止条約機構)そのものがまだ準備委員会という位置づけであり、また、(核実験の監視を前提とする)観測の性格上、軍事・国際安全保障の範疇に属するデータを不用意に公開することはできないことによる。いずれにせよ、このCTBTOの観測ネットークとして高崎観測所が置かれていたことは、一部の関係者や専門家を除いて一般にはあまり知られていなかったように思う。

これも 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況」で既報の通り、高崎観測所は、外務省が立ち上げたCTBT国内運用体制の枠組みに基づき、その業務が委託された(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センターに属する機関である。CTBT核種探知観測所は国内に高崎観測所(観測所記号:R38)と沖縄観測所(R37)があり、また、東海実験施設(RL11)の3拠点が稼動している。これらの観測所と実験施設は、さらにその業務が(独)日本原子力研究開発機構へ委託されて運営されるという流れになっている。ご承知の通り、(独)日本原子力研究開発機構は、原子力研究の総本山であり、実質的に日本の原子力発電所推進の原動力となってきた機関である。つまり、「外務省→(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センター→(独)日本原子力研究開発機構」というフローと、一方では「(独)日本原子力研究開発機構←経済産業省」というフローの中で高崎観測所が位置づけられているわけであり、その存在の微妙さを推し量ることができる。さらに言えば、当然のことながら(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センターは防衛省とも深いつながりを有しており、その結果として「核」を巡る外務、防衛、経産という3つの異なる「イシュー」(Issue)に直接・間接に関与した業務に携わるという非常に興味深い性格をもった組織であることが分かる。

3.高崎観測所の放射線核種探知データの公表状況とその公表条件

BELTIXの知る限りにおいて、(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センター(CPDND)から、これまでに21の資料が公表されている(2011年7月29日アップデート):
  1. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(3月19日時点)
  2. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(3月27日時点)
  3. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(3月29日時点)
  4. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(4月2日時点)
  5. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(4月9日時点)
  6. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(4月19日時点)
  7. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(4月23日時点) 
  8. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月4日時点)
  9. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月10日時点)
  10. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月15日時点)  
  11. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月17日時点)  
  12. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月21日時点)
  13. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月23日時点)
  14. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月28日時点)
  15. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(5月30日時点)  
  16. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(6月11日時点)
  17. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(6月19日時点)
  18. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(6月25日時点)
  19. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(7月3日時点)
  20. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(7月11日時点)
  21. 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況(7月26日時点)
現在公表されている最新のデータは上記21.(7月26日時点)で、これは今でも(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センターのホームページ(新着情報)から入手可能である。不可解なのは、これまで公表されてきたデータ(群)が同財団の過去データ(アーカイブ)として公開されていない点である(BELTIXが収集した上記のデータは、いくつかの新しく公表されたものを除き、WEB上で様々な検索を行なった上で入手した)。したがって、これまで実際にどのくらいの頻度で、いくつのデータが公表されてきたのかは不明であり、その点に関してご存知の方があればご一方いただきたい。いずれにせよ、なぜこのように、積極的な公開ではなく、あいまいな新着情報の提供というスタンスでデータが公表されているかの理由は、各データに記載されている次のようなコメントから類推することができる:

CTBTO準備委員会事務局が取り纏めた報告書は、核実験の探知に関する専門家用に作成されており、公表を予定しているものではありませんが、今回の原子力発電所の事故によりいかなる放射性核種が放出されたかを知ることは、当該事故の影響を科学的に分析する上で有益であること、また、当該報告書は、我が国の観測所で得られた測定データを分析したものであることを踏まえ、日本政府(外務省)がCTBTO準備委員会事務局と調整した結果を受け、我が国のCTBT国内運用体制事務局を務める当センターにて、当該報告書の概要を掲載するものです。

4.高崎観測所のデータにおける不可解さと困惑

(1)幅広い核種の放出が捕捉されている

 高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況」で触れている通り、高崎観測所のデータには、政府や東京電力から公表されているヨウ素やセシウムなど限られた核種に止まらず、テルル129/132、モリブデン99、ニオブ95、テクネチウム99、バリウム140、プロメチウム151、プラセオジム144など比較的半減期の短い、核燃料の核分裂反応で生まれたとしか考えられない様々な核種が捉えられている。高崎における放射性核種探知システムは、エアフィルターで集塵した検体をゲルマニウム半導体検出器(HPGe)によって分析するもので、アルファ崩壊するウランやプルトニウムなどの濃度を検出することはできないものの、断片的な核種分析からは得られない豊富な情報が含まれていることは事実である。 

(2)注目すべきはピーク値の検出時期と福島原子力発電所の事象との関連

まず、次の表をご覧いただきたい。これは 既に高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況」に掲載しているが、BELTIXが入手しているデータの中で最も古い3月19日時点のデータから抜粋したものである。

(クリックで拡大)

これによれば、3月15〜16日(3/15/15:55〜3/16/15:55)にかけての1日間で、膨大な量の放射性核種が検出されており、最も注目すべきは、通常は原子炉の中でしか見つからない半減期6.61時間のヨウ素135が370000mBq/㎥という高濃度で検出されている点である。さらに他の6つのデータを関連させて分析すると、この3月15/16日だけでなく、3月21日、3月30日、4月18日と、断続的に放射能濃度の大幅上昇が見られること、つまり派手な爆発事象後も何度も濃度上昇があることがわかる。 また、より興味深い点は、放射性セシウム全体の累積値はセシウム137の累積値の2倍以上、放射性ヨウ素全体の累積量はヨウ素131の累積値の42倍以上、特にヨウ素 135が3月16日のみ検出であるが全核種中最大量であることなどが挙げられる。ちなみにヨウ素131は放射線を出し終わるとキセノン131mに、ヨウ素135はキセノン135というそれぞれ別の放射性物質に変化し、さらにキセノン135はセシウム135(半減期230万年)に変化するとのことだ。ということは日本の大地には今とんでもない量のセシウム135が堆積しているのでは?という疑惑を抱かせる。この膨大なヨウ素135について、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生によって3号機の「核暴走」で出た可能性が指摘されている。(一部の記述を「中鬼と大鬼のふたりごと」ブログの関連記事から引用させていただいた)


 この他、高崎観測所のデータを巡って様々な推測が行われているようだが、少なくともいずれのケースを想定した場合でも、福島原子力発電所の事故(事象)が原因であることは間違いなかろう。BELTIXにはその原因究明や分析を行なうことは出来ないが、問題となっている時点において福島で何が起こっていたかを日本経済新聞に掲載された時系列の「原発事故関連の主な動き」から探ってみた。


 (いずれもクリックで拡大)

この表を参照する限りにおいて、3月15日から16日にかけては、15日0時02分:2号機で水を通さないドライベントを数分間実施。同6時14分:4号機、音がして壁の一部破損、同9時38分:4号機の建屋から火災発生というイベントが起こっている。この一連の事象が、前掲の高崎観測所のデータに反映されているのだろうか?.....多くの専門家が指摘しているのは、むしろ、3月14日11時01分に起こった3号機の水素爆発に関連しているのではないか、という推論である。問題は、この因果関係を調べる上で最も重要と思われる3月14日から15日(3/14/15:55〜3/15/15:55)にかけてのデータがすっぽりと欠落していることである。

(3)データの欠落と削除:意図的か?あるいは? 

 なぜ3月14日から15日(3/14/15:55〜3/15/15:55)にかけてのデータが欠落しているのか?....BELTIXが入手したこれまでのデータは、全てこの時点での数値が記載されていない。この時期、高崎市も計画停電影響を少なからずこうむっているとはいえ、丸一日分の核種探知(計測)が行なえないほど大きな影響を受けたとは思えない。事実、停電によって探知が行なえなかった時間帯についてはデータにその詳細が記載されている。このような事実をもとにして考えれば、当該データはどこかに確実に存在しており、一般への公表を行なう時点で意図的に削除されたとしか思えない。邪推と言われればそれまでだが、3月14日から15日にかけて探知された核種データには、一般に公表することが憚られる何らかの事象への関連を裏付けるものがあったと考えざるを得ない。先に引用した通り、「CTBTO 準備委員会事務局が取り纏めた報告書は、核実験の探知に関する専門家用に作成されており、公表を予定しているものではありませんが、今回の原子力発電所の 事故によりいかなる放射性核種が放出されたかを知ることは、当該事故の影響を科学的に分析する上で有益であること、また、当該報告書は、我が国の観測所で 得られた測定データを分析したものであることを踏まえて」公表された、という点からみて、仮に(財)日本国際問題研究所/軍縮・不拡散促進センターに問い合わせてみても、恐らく納得できる回答を得ることはできないだろう。ちなみに、 3月15〜16日(3/15/15:55〜3/16/15:55)にかけて検出された膨大な量のヨウ素135の数値は、3月19日、3月27日、3月29日という3つの報告書には記載されているが、4月2日以降に公表された報告書から削除されている。この理由はいったい何か?....この事実もあわせて、こうしたデータの欠落と削除が行われた背景を知ることはできないものだろうか。

「Beer & Wine」:抗酸化物質が 放射線防護と被ばく治療に効果を発揮する


1.放射線防護効果が確認された「ビール成分」

(1)放射線による生じる染色体異常を最大で34%減少させる効果

2005年8月に放射線医学総合研究所から発表されている資料によれば)放射線医学総合研究所粒子線治療生物研究グループは、東京理科大学薬学部放射線生命科学の研究チームと共同で、「ビール成分」が放射線を防護する効果があることをヒトの血液細胞やマウスを用いた実験で明らかにした。アルコール飲料に放射線を防護する効果があることはすでに同研究グループによって報告されていたが、「ビール」に溶けこんでいる麦芽の甘味成分などに放射線により生じる染色体異常を最大で34%も減少させる効果があることがつきとめられた。同研究グループは、広島・長崎の原爆やチェルノブイリ原発事故被害者の中に、アルコール飲料で放射線障害が低減されたという話がある事をきっかけにして研究を展開。「ビール」を使った実験で「ビール」そのものに放射線防護効果があることを明らかにしてきたが、「ビール」の中の何に放射線防護効果があるかは、未解明のままであった。今回、「ビール」」中のアルコール分(エタノール)に加え、「ビール」に溶けこんでいる成分にも放射線防護効果があることをつきとめ、放射線被ばくの前に「ビール」を飲むと、放射線による障害から防護されることを示した。今後、同研究グループは、さらに放射線防護成分の探査を行うとともに放射線を浴びた後の防護効果の確認、血液以外の臓器細胞に対する効果、作用のメカニズムの解明などに研究を発展させていく、と報告されている。

(2)「ビール」の放射線防護効果の確認実験

同研究グループは、エタノール、メタノール、グリセロールなどのアルコール類に放射線防護効果があることが以前から知られていることや、飲酒により放射線障害が軽減されたなどの体験談から、アルコール飲料の放射線防護効果に着目した。数多くあるアルコール飲料の中でも「ビール」を選択したのは、入手し易く、アルコール濃度がそれほど高くない(比較的飲みやすい)などの理由による。2001年には、「ビール」を摂取したヒ トの血液細胞を採取し、放射線を照射してダメージを調べる方法で「ビール」による放射線防護効果を確認した。だが、「ビール」中のどの成分が放射線防護効果をもた らすのかは、調べ切れていなかった。今回放射線防護効果を確認した成分等は、いずれも「ビール」に極めて微量含まれている成分だが、これらが相加もしくは相乗的に作用していることが推察できる。

【研究手法と成果】

「ビール」摂取前と「ビール」大瓶1本を摂取後3時間後に採取した血液(血中エタノール濃度は約10ミリモル濃度)にX線または重粒子線(炭素イオン : 放医研HIMACでがん治療に利用されている)を1グレイから6グレイまで照射し、摂取前後での血液細胞の染色体(ヒトリンパ球染色体)異常を比較した(次ページ図1参照)。その結果、「ビール」の放射線防護効果は、X線ばかりか重粒子線(炭素イオン)にもあることが確認でき、これは、マウスの骨髄死を調べる実験でも同様であった。同じく次ページの図2では、「ビール」の効果がエタノール単独の効果よりも高いこと、ノンアルコールの「ビール」では放射線の防護効果が認められないことが示されており、「ビール」中のアルコールは「ビール」成分の吸収に寄与していることが示唆された。

図1: 放射線により生じた血液細胞一個あたりの染色体異常の数
(飲酒後の染色体異常の数は、飲酒前のそれより明らかに少ない)

図2.:「ビール」などの放射線防護効果比較
 (ノンアルコールでは効果が認められず、エタノール単独よりも、
「ビール」のほうが放射線防護効果が高い)

【「シュードウリジン」など「ビール成分」の放射線防護効果の実験】

    先の実験の結果、「ビール成分」に放射線防護作用を示す物質が含まれていることが予測された。このことを実験的に確かめるため、ビールの微量成分である「シュードウリジン」(pseudouridine)、「メラトニン」(melatonin)、「グリシンベタイン」(glycinebetaine)をそれぞれヒトの血液に添加したり、あるいはマウスに投与(経口投与、腹腔 投与など)して放射線防護効果を調べた。具体的にはX線もしくはセシウム137が発するガンマ線のような低LET放射線と LET50keV / μm(キロ電子ボルト/マイクロメートル)の重粒子線(炭素イオン)を用い、照射量を変化させた時の染色体の異常、マウスの生存率(照射後30日の生存確 率を調べる)などを測定した。その結果、「ビール」に約5μg / mL含有する「シュードウリジン」をヒトの血液に添加した実験では、4グレイのX線照射後のヒトのリンパ球細胞の染色体異常が無添加のコントロールに比べ34%、4グレイの重粒子線(炭素イオン)の場合には、32%減少した。(図3参照)

図3.:シュードウリジン添加ヒトリンパ細胞に放射線を照射した染色体異常の数
(無添加に比べ、染色体異常の減少が明らか)

同じく、「ビール」にごく微量含有するすることが知られている「メラトニン」では、マウスを使った実験からガンマ線照射の場合14グレイから21グレイで防護効果があったが、重粒子線(炭素イオン)では全く効果がないことが認められた。さらに、「ビール」に約80μg / mL含有する「グリシンベタイン」をヒトの血液に添加した実験では、4グレイのガンマ線照射後のヒトのリンパ球細胞の染色体異常が無添加のコントロールに比べ約30%(最大37%)、4グレイの重粒子線(炭素イオン)の場合には、17%減少した。これら一連の実験で、「ビール成分」には放射線防護効果があることが明らかとなった。今後は、この防護メカニズムを明らかにしていくことや血液細胞以外の他の臓器細胞での放射線防護効果の確認、さらに他の「ビール成分」での防護効果を探査していくこととしている。こうした防護効果確認実験では、被ばく前に「ビー ル」を飲むと防護効果は高まるという結論を得た。しかしながら、被ばく後に防護効果があるのかは、いぜん未解明のままであり、さらに「ビール成分」が放射線防護効果を持つメカニズムの解明が待たれている。

    (注1)「シュードウリジン」(β-pseudouridine):N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine (MNNG)により誘発されるサルモネラの変異がビール添加により抑制され、その効果は「ビール」中の「シュードウリジン」によることが2002年岡山大学の吉川友規氏らによって確認された(MNNGはDNAをアルキル化することによりDNA切断を起こし、染色体異常を引き起こす物質である)。「シュードウリジン」は、「ビール」に約5μg / mL含まれているが、製品によって含有量は異なっている。
    (注2)「シーベルト」と「グレイ」:物質が放射線に照射されたとき、物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号Gy。定義J/kg)である。生体(人体)が放射線を受けた場合の影響は、受けた放射線の種類(アルファ線、ガンマ線など)によって異なるので、吸収線量値(グレイ)に放射線の種類ごとに定められた放射線荷重係数(WR)を乗じて線量当量(シーベルト:Sv)を算出する。Sv=放射線荷重係数(WR)×Gy(放射線荷重係数WRは、放射線種によって値が異なり、X線・ガンマ線・ベータ線ではWR=1、陽子線ではWR=5、アルファ線ではWR=20、中性子線ではエネルギーによりWRR=5 - 20の値をとる。

2.「ワイン」に含まれる抗酸化物質も放射線被ばく治療に効果

(1)「抗老化」(アンチエイジング)とともに「抗放射線」効果も認められる

 米国の科学誌(Science Daily)によれば、「ワイン」に豊富に含まれる「レスベラトロール」などの抗酸化物質は、これまで「抗老化」(アンチエイジング)作用で脚光を浴びてきたが、様々な研究から、これら植物由来の抗酸化物質には生体を放射線から守る放射線防護効果があることが明らかになってきた、と伝えている。この記事で言及されている、ピッツバーグ大学医学部放射線治療科の教授であり科長である腫瘍学者Joel Greenberger博士らの研究は、ピッツバーグ放射線対策医療セ ンター(Pitt's Center for Medical Countermeasures Against Radiation)の監修のもとで行われたものである。このセンターは放射線を防御、または緩和する成分を発見・開発し、大規模な原子力災害が発生した場合にそれを供給するために設立されている。Greenberger博士は 「放射線漏れや放射性テロ対策のためにも、放射線を防ぐ成分の研究が必要である。簡単に保管、輸送、管理ができるものが理想的であるが、今のところ『レスベラトロール』がこれらの条件をよく満たした成分と考えられる」と述べており、「現在のところ残念ながら、市場には放射線被ばくに対して防御効果のある薬は存在していない。我々研究チームの目標は、一般の人々に効果的で副作用のない治療を提供することである」、と続けている。Greenberger博士らが行なったマウス実験によると、抗酸化物質の「レスベラトロール」をアセチルによって変化させたとき、被ばくによる被害を一部で抑制することができたという。この研究の結果はボストンで行われた第50回米国放射線腫瘍学会において、「アセチル化レスベラトロール:新しい放射線防御分子」という標題で論文発表されている。「レスベラトロール」がターゲットとするのは、ミトコンドリアの制御を担当する遺伝子である。ミトコンドリアは細胞の発電機のようなもので、身体に化学エネルギーを供給する。この過程で、DNAにダメージを与える「遊離基」(フリーラジカル)が生成されるのだが、「レスベラトロール」によってミトコンドリアを制御することにより、「抗老化」作用や放射線への防御性も高まると考えられている。

(2)抗酸化物質の効果は航空機のパイロットを対象とした実験結果でも確認

米国クリニカルニュートリション学会誌( American Journal of Clinical Nutrition)に発表された、Kristie Leong医学博士らの論文「High dietary antioxidant intakes are associated with decreased chromosome translocation frequency in airline pilots」(航空機パイロットにおける遺伝子転移頻度と高濃度抗酸化物資の摂取との関係)によれば、抗酸化物質が細胞を放射線被ばくから守る作用があると示唆されている。この論文のもととなった実験は、放射線の影響を頻繁に受けている(放射線の強度は高度が上 がるほど強くなる)航空機のパイロットを対象に行われなものである。まず、82人のパイロットの食生活を調査し、βカロテンなどのカロテノイド、ビタミンC、Eなどの抗酸化物質の摂取量を調べた。すると、抗酸化物質を多く摂取しているパイロットほど、DNAの損傷が少なかったという結果が認められたという。

2011年5月4日水曜日

やっと海底土中の放射性物質調査データが発表されたが


1.なぜ東京電力/文部科学省はより広域かつ詳細な核種分析を行なわないのか

福島第一原子力発電所から漏出した大量の高濃度放射能汚染水による、生態系に与える甚大な影響が懸念されている。東京電力は5月3日にやっと周辺海域の海底土の汚染データを公表した。

 原データへのリンク:海底土の核種分析結果(PDF 12.2KB)

これまで一切公表されてこなかった海底土の調査データが出てきたことは、少なからず評価に値する。しかしながら、そのデータは実にお粗末なもので、福島第一の事故現場から15〜20km離れたわずかに2地点のみの測定結果であり、相変わらず、ヨウ素131とセシウム134/137に関する数値に終始している。より詳しい核種分析が「なぜ」出せないのか。さらに、より汚染源に近い海域の調査が行なえないのか。少なくとも燃料ペレットが融解し、さらに格納容器 - 圧力抑制室(サプレッションプール)- が破損している第2号機から漏出した汚染水には、ストロンチウム90やコバルト60、さらにはプルトニウム239+240など天文学的な長さの半減期を持ち、生態系のサイクルによって濃縮されて毒性を高める核種が莫大な量含まれていることはほぼ間違いない。それを無視して、詳細な核種分析のデータを調査しない、あるいはあえて公表しない東京電力の姿勢は全く理解しがたい。 

一方、東京電力へ右へ倣えをするように、同じく5月3日に文部科学省がやはり海底土の調査結果を発表している。


 こちらのデータはもはや「データ」と言える代物ではない。海底土の採取地点は、福島第一原子力発電所の事故現場から南へ50km下った海域。しかもたった1地点の測定による数値である。 測定核種は、お馴染のヨウ素131、セシウム134/137の3種類だが、いずれも「不検出」(測定日時は4月29日)。文部科学省は、この稚拙な資料を公表していったい何を言おうとしているのか。放射性物質の拡散は事故現場周辺に抑え込んでおり、広域への影響はないとでも言い張るつもりだろうか。国際海洋法への欺瞞行為である以上に、どこまで国民を馬鹿にすれば済むのかと言いたくなる。


2.海上保安庁環境情報部による海洋汚染調査

さてここで、海上保安庁環境情報部による海洋調査について言及しておこう。この調査は、核実験等が海洋の自然環境に及ぼす影響を把握するために実施されており、日本近海の海水及び海底土に含まれる人工放射性物質の分布状況、経年変化等を把握するものである。海水については昭和34年(1959年)に、海底土については同48年(1973年)にそれぞれ調査を開始し、以来継続して実施されている。この調査では、外洋1〜10、沿岸域11〜20の合計30地点における海水、および 沿岸域9地点の海底土をサンプリングして、その試料中に含まれる放射性物質の量と経年変化を記録している。


前掲の地図とグラフは、2010年12月発行の調査報告書(2009年調査実施) から一部抜粋したものだが、海水中のストロンチウム90、セシウム137、コバルト60、ルテニウム106の4核種の測定が行われており、海底土については、同じくストロンチウム90、セシウム137、コバルト60の3核種の測定が行なわれている。2007年発行の調査報告書(2006年調査実施)までは海底土についてプルトニウム239+240の測定値が含まれていたが、2007年から2009年までの報告書にはプルトニウムの記載はない。


いずれにせよ、平時における継続的な定点調査においてさえ、国土交通省管轄の海上保安庁によって海底土中におけるストロンチウム90、コバルト60、プルトニウム239+240の測定が行なわれてきている事実に注目すべきだろう。いったい、文部科学省、経済産業省は何を躊躇しているのか。今回の東京電力・福島第一原子力発電所の壊滅的な事故によって、国を挙げて推進してきた原子力行政のほころびが露わになったことから、出来る限り事故の影響を過小に評価しようとする「気持ち」は分からないでもない。しかしながら、国民への責務は果たしていただかねばならない。おりしも、国際環境NGOのグリーンピースが事故現場伊海域での海洋調査の許可申請を行なっていると聞く。グリーンピースの調査船「虹の戦士号」がオランダ船籍であることを理由に、外務省は日本領海内の調査を拒否するとともに、資料の採取方法や核種測定の機器を指定して事実上調査が行なえないような要求をつきつけてもいるようだ。これ以上、国際的な非難を浴びるような愚を冒さないでいただきたい。政府はことあるごとに、国民をパニックに陥れないように....と力説するが、パニックを起こしているのは日本国政府そのものなのではないか。事実を正しく伝えることなしに、いかなる政府も安心と信頼を得ることはできない。国民の理解と協力を求めるならば、「決然とした」(determined)「高潔さ」(integirty)が貫かれねばならないのだ。

2011年5月1日日曜日

福島県の学校の屋外活動制限:「20ミリシーベルト/年間」を考える(2)

 1.福島県における小中学校等の環境モニタリング結果

福島県災害対策本部(県)は原子力災害 現地対策本部(国)と共同で、4月19日に文部科学省から発表された「文部科学省:福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方につい て 」に先立ち、4月5〜7日の3日間、福島県内の小学校、中学校、幼稚園・保育園、および特別支援学校の校庭・園庭における空間線量を測定する環境モニタリ ングを実施している。

福島県環境放射線モニタリング実施計画(平成23年4月4日:福島県災害対策本部)

この調査は、福島第一原子力発電所から20km圏内の避難地域を除く福島県内の、小学校。中学校、幼稚園、保育所、特別支援学校の合計1,428校(園)を対象とした調査であり、以下のような内訳となっている。

種別
校庭・園庭数
方部別内訳
県北
県中
県南
会津
南会津
相双
いわき
小学校
492
114
137
46
70
16
32
77
中学校
237
45
65
18
38
9
16
46
幼稚園
334
97
70
32
52
2
26
55
保育所
343
77
80
25
61
13
20
67
特別支援学校
22
6
7
1
4
0
1
3

合計
1,428
339
359
122
225
40
95
248

この調査結果は、以下のリンクにデータが掲載されている。

福島県放射線モニタリング小・中学校等実施結果(4月5日調査:福島県災害対策本部発表)
福島県放射線モニタリング小・中学校等実施結果(4月6日調査:福島県災害対策本部発表)
福島県放射線モニタリング小・中学校等実施結果(4月7日調査:福島県災害対策本部発表)

ちなみに、これらのデータは、郡山市の「福島県放射線モニタリング調査実施結果【小・中学校、幼稚園、保育所、特別支援学校】」として公開されているものを参照した。この3日間の調査をまとめた資料は福島県庁の小中学校等モニタリングのページからも公開されている。

福島県放射線モニタリング小・中学校等実施結果(全調査まとめ)について

 2.福島の学校が直面するリアリティ

こ の調査結果に基づいて、4月5〜7日時点での福島県内(25km退避地域を除く)の1,428校について、どのくらい放射能汚染が広がっているか分析して みた。まず、政府(文部科学省)が適用しようとしている(1)「20ミリシーベルト/年=3.8マイクロシーベルト/時」を超える学校がどれくらいある か、続いて(2)仮に(一般的な年間許容量として認知されている「1ミリシーベルト/年=0.2マイクロシーベルト/時」以下の学校がどれくらいあるか、 の2つに関してその実数を調べてみた。計算方式は以下の通り: 

(1)年間20ミリシーベルト=2.283マイクロシーベルト/時が許容量とするならば: 
   屋外3.805マイクロシーベルト/時X8時間 
   屋内1.524マイクロシーベルト/時X16時間 
   ただし、屋内被ばくは屋外活動時の40%として想定する。



(2)仮に年間1シーベルト=0.114マイクロシーベルト/時が許容量とするならば
   屋外0.190マイクロシーベルト/時X8時間
   屋内0.076マイクロシーベルト/時X16時間
   ただし、屋内被ばくは屋外活動時の40%として想定する。

その結果、驚くべきことがわかった。

(1) 福島県内で既に「20ミリシーベルト/ 年=3.8マイクロシーベルト」を超える校庭(園庭)の汚染度を示す学校(園・施設)の数は56件に上っている。これは調査した学校(園・施設の総 数:N=1,428)の4%に過ぎないものの、少なくとも現状では休校措置をとるか、あるいは早急に汚染された校庭の土壌を撤去、除染する必要がある。

市町村
区分
調査地点
測定平均値(μSv/h )
1m高さ
1cm高さ
4月5日実施分
福島市
公立小学校
福島市立御山小学校
4.9
6.3
公立小学校
福島市立下川崎小学校
4.2
4.9
公立小学校
福島市立大久保小学校
3.8
4.7
公立小学校
福島市立福島第二小学校
4.2
5.3
公立幼稚園
福島大学付属幼稚園
4.1
5.6
国立小学校
福島大学付属小学校
4.3
5.4
国立中学校
福島大学付属中学校
4.7
5.9
私立小学校
桜の聖母学院小学校
4.2
5.3
伊達市
公立小学校
伊達市立小国小学校
4.8
5.6
本宮市
公立小学校
本宮市立和田小学校
4.2
5.4
公立幼稚園
本宮市立和田幼稚園
3.9
5.4
川俣町
公立中学校
川俣町立山木屋中学校
6.6
8.8
公立幼稚園
川俣町立山木屋幼稚園
4.7
5.3
浪江町
公立小学校
浪江町立津島小学校
23.0
30.1
公立中学校
浪江町立津島中学校
18.8
22.9
保育園
津島保育所
22.8
27.9
飯舘村
公立小学校
飯舘村立飯樋小学校
9.6
10.7
公立小学校
飯舘村立臼石小学校
11.5
12.5
公立小学校
飯舘村立草野小学校
14.0
18.2
公立中学校
飯舘村立飯舘中学校
9.7
12.2
公立幼稚園
飯舘村立飯樋幼稚園
10.0
11.3
公立幼稚園
飯舘村立草野幼稚園
12.1
14.7
保育園
やまゆり保育所
8.3
9.5
4月6日実施分
福島市
公立小学校
福島市立南向台小学校
4.2
5.6
公立小学校
福島市立第三小学校
4.8
6.2
公立小学校
福島市立渡利小学校
4.8
6.0
公立中学校
福島市立平野中学校
3.9
4.6
公立中学校
福島市立渡利中学校
5.4
6.9
公立幼稚園
福島市立渡利幼稚園
4.8
6.5
保育園
渡利保育所
3.9
4.9
保育園
さくら保育園
3.9
5.3
認可外
こどものいえ そらまめ
3.8
5.7
伊達市
公立小学校
伊達市立富成小学校
3.9
4.9
二本松市
公立小学校
二本松市立石井小学校
4.0
4.8
公立小学校
二本松市立杉田小学校
3.9
5.0
公立中学校
二本松市立二本松第二中
3.9
5.1
公立中学校
二本松市立小浜中学校
4.2
5.0
公立幼稚園
二本松市立杉田幼稚園
4.0
5.2
公立幼稚園
二本松市立石井幼稚園
3.9
5.7
相馬市
公立小学校
玉野小学校
4.4
5.5
公立中学校
玉野中学校
4.1
5.2
公立幼稚園
玉野幼稚園
4.2
5.6
4月7日実施分
福島市
公立小学校
福島市立大波小学校
4.8
6.1
公立小学校
福島市立岡山小学校
3.8
4.7
公立中学校
福島市立福島第二中学校
4.1
5.7
公立中学校
福島市立福島第一中学校
3.8
4.8
私立中学校
福島成蹊中学校
4.5
5.7
私立幼稚園
三育幼稚園
4.0
4.9
保育園
聖心三育保育園
4.3
6.0
特別支援学校
福島市立福島養護学校
3.8
4.8
二本松市
認可外
おひさま保育園
3.9
6.2
郡山市
公立小学校
郡山市市立薫小学校
4.5
5.5
公立中学校
郡山市立郡山第二中学校
3.8
4.8
公立中学校
郡山市立郡山第一中学校
4.5
5.6
公立中学校
郡山市立郡山第三中学校
4.4
5.5
私立幼稚園
セントポール幼稚園
3.8
6.0

(2) 一方で、「1ミリシーベルト/年=0.2 (0.19)マイクロシーベルト/時」を許容量と考えた時に、その基準を下回っており、現行で何ら屋外での活動を制限しなくて住む学校(園・施設)は わずかに81 件という結果が得られた。これは全体の5.7%に過ぎず、残る1,347校(園・施設)は、既に許容量限度を超えており、休校措置が必要か、あるいは、幼 児、児童、生徒の屋外活動を制限せざるを得ないこととなる。

市町村
区分
調査地点
測定平均値(μSv/h )
1m高さ
1cm高さ
4月5日実施分
郡山市
私立幼稚園
湖南幼稚園
0.18
0.22
天栄村
公立小学校
天栄村立湯本小学校
0.13
0.14
保育園
天栄村立湯本へき地保育所
0.12
0.12
会津若松市
公立小学校
会津若松市立湊小学校
0.13
0.15
公立中学校
会津若松市立湊中学校
0.11
0.13
保育園
湊しらとり保育園
0.14
0.14
猪苗代町
公立中学校
猪苗代町立東中学校
0.17
0.22
保育園
川桁保育所
0.17
0.22
特別支援学校
猪苗代養護学校
0.18
0.21
柳津町
公立小学校
柳津町立西山小学校
0.15
0.18
三島町
公立小学校
三島町立三島小学校
0.14
0.18
公立中学校
三島町立三島中学校
0.14
0.16
金山町
公立小学校
金山町立横田小学校
0.06
0.06
公立中学校
金山町立金山中学校
0.13
0.17
保育園
川口保育所
0.13
0.14
保育園
横田保育所
0.10
0.13
昭和村
公立中学校
昭和村立昭和中学校
0.13
0.15
保育園
昭和村保育所
0.14
0.17
檜枝岐村
公立小学校
檜枝岐村立檜枝岐村小学校
0.09
0.12
公立中学校
檜枝岐村立檜枝岐村中学校
0.09
0.12
只見町
公立小学校
只見町立朝日小学校
0.14
0.19
公立小学校
只見町立明和小学校
0.12
0.15
公立小学校
只見町立只見小学校
0.11
0.13
公立中学校
只見町立只見中学校
0.12
0.14
保育園
朝日保育所
0.06
0.06
保育園
明和保育所
0.13
0.12
保育園
只見保育所
0.08
0.06
南会津町
公立小学校
南会津町立南郷第二小学校
0.19
0.23
公立小学校
南会津町立南郷第一小学校
0.13
0.12
公立小学校
南会津町立針生小学校
0.08
0.11
公立中学校
南会津町立伊南中学校
0.15
0.15
公立中学校
南会津町立南郷中学校
0.15
0.15
保育園
富田保育所
0.14
0.14
4月6日実施分
石川町
保育園
クローバー保育園
0.16
0.17
認可外
郡山ヤクルト販売()石川センター保育所
0.19
0.26
矢祭町
公立小学校
矢祭町立関河内小学校
0.17
0.18
公立小学校
矢祭町立関岡小学校
0.18
0.20
公立小学校
矢祭町立東館小学校
0.18
0.23
公立幼稚園
矢祭町立東館幼稚園
0.17
0.23
保育園
矢祭町保育所
0.17
0.22
会津若松市
公立小学校
会津若松市立大戸小学校
0.19
0.23
保育園
大戸報徳保育園
0.15
0.15
保育園
面川報徳保育園
0.18
0.25
特別支援学校
福島県立会津養護学校竹田分校
0.18
0.31
喜多方市
公立小学校
喜多方市立入田付小学校
0.12
0.12
公立小学校
喜多方市立高郷小学校
0.18
0.21
公立中学校
喜多方市立高郷中学校
0.14
0.17
公立幼稚園
喜多方市立すぎっこ幼稚園
0.18
0.20
保育園
喜多方市荻野保育所
0.13
0.12
保育園
ひめさゆり保育園
0.19
0.24
西会津町
公立小学校
群岡小学校
0.09
0.10
公立小学校
新郷小学校
0.14
0.15
公立小学校
奥川小学校
0.11
0.13
公立小学校
尾野本小学校
0.13
0.19
公立小学校
野沢小学校
0.11
0.14
公立中学校
西会津中学校
0.12
0.16
保育園
群岡保育所
0.13
0.16
保育園
尾野本保育所
0.15
0.20
保育園
野沢保育所
0.15
0.20
保育園
芝草保育所
0.06
0.07
南会津町
公立小学校
荒海小学校
0.09
0.09
公立小学校
檜沢小学校
0.07
0.09
公立小学校
田島小学校
0.09
0.10
公立小学校
田島第二小学校
0.12
0.13
公立中学校
舘岩中学校
0.08
0.08
公立中学校
荒海中学校
0.10
0.12
公立中学校
檜沢中学校
0.09
0.11
公立中学校
田島中学校
0.10
0.10
公立幼稚園
舘岩幼稚園
0.05
0.06
私立幼稚園
田島暁の星幼稚園
0.11
0.14
保育園
びわのかげ保育所
 0.12
0.11
保育園
田部原保育所
0.09
0.14
保育園
田島保育園
0.11
0.13
4月7日実施分
喜多方市
保育園
さくらっこ保育園
0.19
0.22
猪苗代町
認可外
フォーチュン・キディ・ガーデン
0.18
0.22
下郷町
公立小学校
下郷町立江川小学校
0.17
0.21
公立小学校
下郷町立楢原小学校
0.10
0.10
公立小学校
下郷町立旭田小学校
0.11
0.12
公立中学校
下郷町立下郷中学校
0.10
0.11
保育園
しもごう保育所
0.12
0.15
保育園
湯野上保育所
0.18
0.2

このことは一体何を意味しているか。

3.許容量基準値を定めることの難しさとジレンマ

仮に「20ミリシーベルト/年」を許容すれば、福島県下の小中学校(園・施設)の大半は、現状のままで、幼児、児童、生徒の屋 外活動の制限を行なわなくとも運営が可能となる。しかしながら、その「20ミリシーベルト/年」の許容量が、(長期的に見て)果たして子供たちの健康を損 なわないという保証を与えてくれる論拠は希薄である。一方、「1ミリシーベルト/年」に固執すれば、逆に大半の学校(園・施設)では通常の運営が不可能と なり、大幅に幼児、児童、生徒の屋外活動が制限されるか、極端な場合は休校・閉校の措置をとらねばならない場合もでてこよう。

次 の世代を担う子供たちの健康は最大限の努力で守られなければならない。しかし一方で、屋外での遊びやクラブ活動など、のびやかで豊かな学校生活の喜びを保 証してあげることも重要だ。よしんば、頑なに「1ミリシーベルト/年」の基準を遵守しようとすれば、多くの学校が登校不能となり、遠くの学校へ通学しなけ ればならなかったり、集団で転校(疎開)することも考慮しなければならなくなる。

確 かに「20ミリシーベルト/年」という許容量が定められた経緯には納得できない部分が多々あり、即時撤回を求める声が高まっていることも無理からぬことで ある。しかしながら、どのような基準値を設けるにしろ、放射線被ばくによるリスクを完全に避けることはもはや出来ない。果たして「20ミリシーベルト/ 年」に妥当性はあるのか、やはり「1ミリシーベルト/年」を遵守すべきなのか。あるいは、5ミリ、10ミリ、15ミリなどの選択肢を考慮すべき か....。現在までに得られているモニタリング結果の厳しい事実(リアリティ)を念頭に置きながら、慎重かつ迅速な決定がなされるべきだ。

関連情報:
NAVERまとめ

【被ばく関連】誰が福島県内の学校における年間20ミリシーベルト基準を決めたのか

Google Map

福島第一原発から漏れた放射能の広がり